2022年4月15日金曜日

【太陽光発電】(15)インバータを選ぼう!

発電した電気を普段通りに使うため、インバーターを選ぼう!



どうも、サンドマンです。先日福島出張中に大地震に遭ってしまいました。停電&断水って辛いですね。こんな時に自分で発電できたら・・・!

さて今回は、近頃更新少なめな太陽光発電の続編をお送りします。これまで、ソーラーパネルチャージコントローラ バッテリー、およびそれらを繋ぐ配線の準備を進めてきました。今度は、貯めた電気を使うための機材、「インバータ」を準備しなくてはなりません。というわけで今回の記事では、インバータの選定に関わるあれこれを紹介していきます!




【なぜインバーターが必要か?】

まず最初に、「そもそも発電された電気があるのに、なぜインバータをつけなくてはならないのか?」から説明しなくてはいけませんね。
(人によっては釈迦に説法となるかもしれないので、必要に応じて適宜読み飛ばしてください。)

電気の流れ方には、「直流(DC)」「交流(AC)」の2種類が存在します。簡単に言えば、直流は電流の流れる方向が一定で、交流は電流の流れる方向が一定時間ごとに逆転しています。図に表すと以下のようになります。



商用電源(家庭用のコンセントから取れる電源)は、交流となっています。理由はここでは詳細に説明しませんが、電力を長距離運ぶ際に、交流を使った方が効率やコストの面で(少なくとも現在は)都合が良いからです。(直流と交流の違いに関する詳細な比較は、松定プレシジョンの技術コラム[1]などをチェックしてみてください。)

無論、一般に売られている多くの家電は交流の電源で動くように作られています。いきなりバッテリーに接続してもちゃんと動かない可能性が高いです。

そこで、太陽光発電により生み出した直流の電源を、商用電源と同様の交流電源に変換する装置が「インバータ」です。いつも家のコンセントに繋いで使っている機器を、オフグリッド太陽光発電システムに接続して使いたい場合には、必ずインバータを用意してくださいね。私たちは、発電した電力でエアコン等も動かしたいので、インバータを準備することにしています。

一方で、インバータが不要なシステムを作るアプローチもあります。それは、「発電した電気を直流で動く機器のみに使用する」ことです。巷には「直流で動く家電」が数多く販売されています。照明、炊飯器、ポット、電子レンジ、洗濯機・・・。車載用を想定した製品が多そうです。性能は少々劣りますが、インバータなしでも一通りの生活ができるかもしれませんね。以下のページでより詳しくまとめられていますよ!

実はインバータで直流を交流に変換する際には、インバータ自身の電力消費などによるエネルギーのロス(損失)が生じます。国内メーカの最新型で、効率は90%前後[3]のようなので、少なくとも10%程度はロスしていることになります。ですので、インバータを介さず直接直流電源専用の機器に接続すれば、発電した電気を無駄なく使うことができるわけです。自分で発電した電気の使い道が限定されている場合、「自分で発電した電気しか使わないぞ!」という心意気がある場合には、インバータを使わないアプローチもアリかもしれません。
なお、このようなシステムを組む際には、使う機器が発電システムの電圧(≒バッテリーの電圧)に適合しているかチェックしましょう。大きく異なる場合には、電圧の変換が必要となります。

話が脱線しますが、交流電源用の家電製品の一部には、ACアダプタや内部の電源回路で交流を直流に変換しているものがあります。この辺りをうまく改造してあげれば、直流電源対応も不可能ではなさそうですが・・・、インバータを付けるよりはるかに面倒臭そうなので、詳細は割愛します(笑)。


まとめ
◎インバータは、発電した電気を一般の家電(100V交流の商用電源に繋いで使うもの)で使うために必要な装置。
◎直流で動く電気機器だけを使うなら、インバータを不要にできる。(ただし、電圧は合わせる必要あり)

【系統連系との違い】

ここで、インバータに関連のある事柄として、系統連系との違いを説明しておきます。(最初の記事で「今後説明する」と言っておきながら、全然説明していませんでしたので・・・)

系統連系は、自分で発電した電気を商用電源(電力会社から買っている電源)と混ぜて使用したり、外に売る(売電)するために、自家発電のシステムと商用電源のシステムを接続することを言います。



系統連系のためには、発電した電気の流れ方を商用電源に合わせなくてはいけません。この変換の役割をパワーコンディショナと呼ばれる機器が担っています。商用電源は交流ですから、パワーコンディショナには直流を交流に変換するインバータの機能が内臓されています。ただし系統連系のためにはそれだけでは不十分です。


下の図のように、2つの交流の周波数や位相(≒電流の向きが切り替わるスピードやタイミング)が異なる電気を混ぜると、互いに打ち消しあってしまい、無駄が発生してしまいます。パワーコンディショナにはこれを防ぐための、商用電源と周波数と位相を合わせる機能も含まれています。



オフグリッドソーラー発電システムでは商用電源との接続は行わないので、パワーコンディショナのような、商用電力と周波数や位相を合わせる機能は不要です。

また、パワーコンディショナの機能はこれだけではなく、ソーラーパネルの発電電圧をコントロールする機能(チャージコントローラのMPPT制御のようなもの)や、異常発生時に安全に解列する(系統連系をストップし、自家発電系統と商用電源系統を切り離す)保護機能などが備わっています。チャージコントローラ+インバータ+系統連系機能がセットになったようなもの、というイメージでよいでしょう。
系統連系に関するより詳細な解説は、松定プレシジョンの技術コラム[4]などを参考にしてみてください。

なお、系統連系を行う場合には電力送配電会社との契約が必要です。商用電源との周波数・位相合わせに失敗すると、商用電源の品質低下を招くリスクがあり、その際のトラブルを防止するためです。東京電力パワーグリッドの場合、契約要綱[5]技術基準[6]などの各種条件を満たす必要があります。さらに発電した電力を売電する場合には、売電に関する契約も必要です。


少し話が脱線しますが、パワーコンディショナと似た機器として、グリッドタイインバータなるものが安価に販売されています。グリッドタイインバータは、簡易的な系統連系機能を持ったインバータで、出力側のプラグを商用電源のコンセントに繋いで使います。パワーコンディショナと同様、交流出力の電圧・周波数・位相を商用電源と合わせることができます。
特別な工事不要で、極めて簡単に使用できますが、個人でこれを使用する際には2つほど注意点があります。


1つ目は、停電時には使用できない点です。商用電源の位相を検知して電気を流し込む仕組みなので、停電時には位相検知ができず、全く機能しないという点です。停電時の予備電源としての使用はできませんので注意してください。
2つ目は、電力会社との契約が必要だが、簡単ではないという点です。契約が必要な理由は先に述べたとおりです。契約の条件を満たすためには、使用するグリッドタイインバータ自体が技術基準を満たしていることを証明する必要があります。東京電力エナジーパートナーの資料[7]によれば、「認証登録品」以外のインバータを使用する場合には別途相談ください、とあります。市販されているグリッドタイインバータの多くは海外メーカ製であり、おそらく「認証登録品」ではないでしょう。そのため、この証明が不可能、あるいは時間がかかる恐れがあります。もちろん、契約なしで使用することも「できてしまいます」が、何かあった時には自己責任となります。

まとめ
◎系統連系は、発電した電気を商用電源に流すシステム構成。売電ができる。
 オフグリッドの場合には系統連系不要。
◎系統連系のためには送配電会社との契約が必要。市販のグリッドタイインバータを使用する場合にも厳密には契約が必要となるので注意する。

【正弦波と矩形波】

ここからは、インバータを選定する際に確認すべき仕様について説明していきます!
特に重要なのは ①正弦波か否か ②最大出力 の2点です。まずは①から説明していきましょう!

市販されているインバータには、大きく分けて正弦波出力と矩形波出力タイプの2種類が存在します。これらの違いを下図に示します。ここまでの説明で使用してきた交流電源の電圧波形は、正弦波(サイン波)と呼ばれます。見ての通り、なめらかな曲線となっています。商用電源の電圧もこの波形になっています。一方で、矩形波は滑らかではなく、ギザギザした波形となっています。

正弦波と矩形波の違い(出典:セルスター工業HP[8]

一般に、同じ出力のものであれば矩形波出力タイプの方が安いです。なぜなら、矩形波は出力電圧を数段階切り替える操作だけで作れてしまうので、内部の回路構成をシンプルにできるからです。
しかし、単に安いからといって、闇雲にこれらのタイプを選んではいけません。なぜなら、一部の家電は、矩形波の入力に対応していないからです。

擬似正弦波や矩形波では使えない可能性があるものには以下のようなものがあります(出典:セルスター工業HP[8]
  • 電子レンジ
  • 扇風機
  • 炊飯器
  • 調光器
  • 電気ポット
  • 電気コタツ
  • 電気毛布
  • 電磁調理器(IH)
  • インバーター式ラピッドスタート方式の蛍光灯
  • 力率改善回路搭載のACアダプター・充電器
あらかじめ矩形波でも動作することがわかっている家電しか繋がない!という場合を除いては、正弦波出力タイプを選択するのが無難です。

なお、矩形波のことを擬似正弦波修正正弦波と表記しているケースもあります。これらは、正弦波とは異なりますので注意しましょう。名前に正弦波と付いているからといって勘違いしないようにしてくださいね。普通の正弦波であることを明確に言い表すため、「純正弦波(Pure Sine Wave)」と表記しているケースもありますので、参考にしてください。


【出力容量の確認】

次に②出力容量のチェックをしましょう。
当然ではありますが、接続予定の家電の消費電力(定格消費電力)をチェックし、それを上回る容量のものを選択します。ただし、それだけでは不十分です。

一部の家電には、電源投入の瞬間に、定格消費電力の数倍の電流が流れてしまうものがあります。このような電流を「突入電流」と言います。
突入電流の大きさや発生する時間などは、家電内部の回路を構成する機器によって異なる(参考:[9])ため、家電の種類によって様々です。ですので、定格消費電力に対してなるべく余裕を持った出力容量のものを選びましょう。不安であれば事前に使う家電の突入電流を測定するのもアリです。(この辺り、データベースが整理されていると便利なんだろうなあ・・・)

まとめ
◎(純)正弦波出力タイプのものを選んだ方が無難
◎出力容量は、突入電流を考慮して余裕を持ったものを選ぶ



さて、ここまでインバータにまつわるあれこれを説明してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。今後の記事では、試しに購入したインバータの動作テストに関して紹介していく予定ではありますが、このあたりを踏まえず進めてしまった部分もあり、なかなか苦労しました・・・(汗)。順次UP予定ですので、皆様の参考になりましたら幸いです。

【参考Webサイト】

[1] 松定プレシジョン 技術コラム 直流電源と交流電源の違い
[2] ecoばか実験室 12V直流で動く家電一覧〜オフグリッドや車中泊に!
[3] 株式会社電菱 製品紹介 DC-AC正弦波インバータ GD150
[4] 松定プレシジョン 技術コラム イチから学ぶ系統連系
[5] 東京電力パワーグリッド株式会社 自家発電設備等の低圧電線路との連系に関する契約要綱
[6] 東京電力パワーグリッド株式会社 系統連系に係る設備設計について
[7] 東京電力エナジーパートナー株式会社 自家発電設備等からの系統連系に関する申込書類のご案内
[8] セルスター工業株式会社 製品情報 SI-1500/12V
[9] パナソニック株式会社 制御機器 よくある質問(FAQ)ー負荷の違いにより突入電流はその値や波形が異なりますが、どのような違いがあるのですか?


それでは今回はこれにて!

(サンドマン)




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