本格的な人口減少社会を迎えている日本。それに伴い、地方を中心として空き家の増加や土地余りの問題が顕在化していると言われる。売りたくても買い手がつかない、そんな不動産をただ持て余して困り果てるケースも多いらしい・・・
今回の記事は、私サンドマンが担当する。私は日頃から妻に「キッチンと庭の広い一軒家に住みたい」と言われ、近所にお手頃な宅地がないものか、すぐ買う気もないのにネット検索してしまう。今回はそんな私にも関係のある、不動産に関する話題をお届けする。少々長いが、最後までお付き合いいただけるとありがたい。
近頃「0円物件」というワードがちょっとした話題になっているらしい。その名の通り、「土地や空き家を0円(※)で譲ります!」ということのようだ。0円物件のみを集めたポータルサイトまで登場しているらしい。
(※)譲渡に係る諸手続きの費用を負担する必要はあるので、完全な無料ではない。
「土地や建物なんて、売れば収入になるのに、なぜ0円なのか?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれないが、冒頭にも述べたように、世の中には「買い手がつかない土地・建物」が結構あるそうなのだ。現に、Mr.H氏の実家(@北陸地方)が所有する土地の一部について、自治体から道路用地に使わせてほしいと交渉を持ちかけられた際に、自治体は頑なに「購入することだけは拒んだ」のだそうだ。自治体ですら買おうとしないのだ。
値がつかなくても0円で譲り渡したい、そう思うのにはそれなりの理由がいくつかある。
- 土地建物を所有していれば固定資産税がかかる。使いもしないものに対して税金を払い続けるのはもったいない。
- 土地建物のメンテナンスも面倒臭い。使わない土地なのに草刈りをしたり、使わない家なのに倒壊しないようにメンテナンスするなんて、なんて無駄な修行なのだろう。
- 無駄だからといって空き家のメンテナンスをせず、倒壊寸前の危険な状態にしてしまうと、国から「空家等対策特別措置法」に基づく「特定空き家」に指定されるリスクもある。こうなると、固定資産税が最大6倍にまで跳ね上がったり、50万円以下の過料を要求される可能性もある・・・
では、買い手がつかない物件とは、どんな物件なのか。色々調べると、例えばこんなものがある:
- 交通の利便性が極度に悪い土地(これは容易に想像ができる)
- 住むには大掛かりなリノベーションが必要な空き家(これもまあ想像できる)
- 接道義務(原則幅員4mの建築基準法上の道路に、2m以上接する必要がある)を満たしておらず、建物を再建築できない土地
- 都市計画において「市街化調整区域」に指定されていて、建物を建築できない土地
「タダほど怖いものはない」とはよく言われるものだが、0円物件にはやはりなんらかの「訳あり」な物件が多いわけである。
より詳細な情報は、例えば以下のページなどを参照されたい。
とはいえ物は考えようで、これらの制約を踏まえて良い活用方法を見出せば、0円物件でもお宝に変化を遂げるかもしれない。僕らのガレージでは、多様なモノづくり・コトづくり活動を展開している。まともな建物が建築できない土地だとしても、実験用のフィールドやイベントスペースなど、有効な使い道を検討できるかもしれない。
そんな折、先ほど紹介した「みんなの0円物件」に、僕らのガレージからほど近い神奈川県大磯町の物件が掲載された。
市街化調整区域のために建築不可とのことだが、「都心からそこそこ近いこの場所で0円?お買い(?)得では?」そんな期待感をもとに我々は、地図を頼りに現地へと向かった---
現地へ向かう道中の様子を撮影し忘れたが、ネットにちょうどよい紹介動画が上がっていたので、引用させていただこう。
ご覧の通り、この物件は海沿いの国道から路地に入り、急な坂を延々と登った先に立地する山林である。
おおよそこのあたりだろうか。車を止めて調査を開始する。
振り返ると、眼下に相模湾を一望できる。
随分高いところまで登ったものだ。
さて、どうやって崖を登るのか。途方にくれながら周囲を見渡すと、なんとか登れそうな獣道を見つけた。仕方がないのでここから突撃するとしよう。
登山の装備を一切せずに来てしまった我々。履いている靴は登山靴ではなく安全靴である。
「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫だ、問題ない」
ちゃんと手すり代わりのロープが引かれているではないか。
軽装備の私たちにとっては命の綱である。ちょっと細いが。
我々の前を数名の登山者やトレイルランナーが通り過ぎていった。
山道に似つかわしくない、随分と綺麗な看板もある。
どうやらこの道は、大磯駅側から高麗山(山頂は「湘南平」と呼ばれる)へと続く登山道の一部のようだ。こちらのブログを見ると、同じような写真が掲載されている。
さて、探索に戻ろう。登山道から目的地に方に伸びる獣道を探し、下ってみる。
道といっていいのか極めて怪しい道である。
しばらく進んでいったその先で、スマホのGPSを確認し、ついに「ここだ!」というポイントを見つけたのである。それがこちら。
草木が鬱蒼と生い茂る空間。
斜度は30度くらいあるだろうか。急峻な山林である。建物の建築はおろか、そもそもたどり着くことさえ難しい。私たちは、0円物件を少々舐めていたようだ。ここを活用するにはなかなかのテクニックが必要そうだ、と感じた。しかしながら、
ここから眺める景色は最高である。
近くに生えていたこの木。アルプスの少女ハ●ジばりのブランコを掛けたくなるのは私だけだろうか。高所恐怖症でなければ、きっと気持ちがいいはずだ。
こうして0円物件の現地調査は終了。私たちはそそくさと獣道を伝い、山を下った・・・
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その上で私たちは、0円物件の有効活用の仕方をしっかりと考えていきたいと思う。今回の物件には手をつけられないかもしれないが、今後似たような物件が数多く市場に出回ることだろう。これらを柔軟な発想で活用することが、地域の社会問題を解決する新たなイノベーションに繋がらないだろうか。そんな大層なことを考えている、今日この頃である。。。
皆様も、もし良いアイデアが思い浮かんだら、0円物件を取得することを検討してみてはいかがだろうか。0円物件活用のアイデアや、実際に活用した事例があれば、僕らのガレージに気軽に情報をお寄せいただきたい。(この記事のコメント欄でも構わない。)
ここまで長々と駄文を書き連ねてしまった。毎度反省である。今回は、この辺りで筆を置くこととする。
(サンドマン)
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