どうも、サンドマンです。我が家の猫は暑がりなので、よく扇風機の前でくつろいでいます。
さて今回は、以前の記事で紹介したアルケリス(Archelis)見学の続編です。アルケリスは、立ち仕事を楽にするアシストスーツを開発・販売している会社で、横浜市金沢区にあります。Twitterのスペースでの雑談で中の人と知り合い、見学が実現。
アルケリス株式会社の公式HPはこちら!
以前の記事では、アシストスーツの技術交流の模様をお伝えしました。アルケリスの誇るアシストスーツ「Archelis」の装着体験や、Niiさんが開発中のパワーアシストスーツのデモなどなどなど。。。。
しかし今回の目的はそれだけではありません。この写真の真ん中に写る謎の扇風機型オブジェ、これは一体何なのか・・・
近づいて見てみると・・・
なにやら扇風機が魔改造された何かのようだ。
この正体は・・・
NHK「魔改造の夜」にエントリーした作品なのである!
Youtubeに番組の紹介動画が上がっていたのでペタリ。
知る人ぞ知る人気番組なのだ。
超一流のエンジニアたちが極限のアイデアとテクニックを競う技術開発エンタメ番組「魔改造の夜」 “子どものおもちゃ”や“日常使用の家電”がえげつないモンスターへと姿を変える。 世界中でここにしかない、興奮と感動の夜会へようこそ!
実は、今回の見学実現のきっかけとなったTwitterのスペースでは、ちょうどその時放送されていた「魔改造の夜」をトークテーマとしていたのです!すると偶然出演者が登場し、大盛り上がりする展開に・・・
今回の見学のもう一つの目的、それは、この魔改造された扇風機を見学することだったのです!
それにしても、出会いはひょんなことから突然に起きるものなのですね!
さて話を戻します。
冒頭でご覧いただいた、扇風機を魔改造して挑んだのは・・・
「扇風機50m走」
あのー、何を言っているんだかよくわからないんですけど・・・
「扇風機50m走」とは、扇風機を魔改造して、長さ25mの直線コースを往復できるようにし、そのタイムを競うという謎競技なのである!
ちなみに、魔改造といっても、どんな改造をしてもいいというわけではなく、きちんとレギュレーションが定められており、以下の項目を満たしている必要があります。
──魔改造のルール・50メートルを速く走ったチームの勝利・風の力だけで走ること・折り返しラインを完全に越えないと失格・操作はスイッチを1回押すのみ・「そよ風」で風鈴を30秒以上、心地よく鳴らしてから走ること・試技は2回・改造費は試作を含め5万円以内・失敗してもかまわない(NHKの番組紹介ページより)
しかも、開発期間はわずか1.5ヶ月ほど。超絶ハイスピードな設計・製作・試行錯誤が求められるのです!
アルケリスさんは、「チームNットー」の一員として出場しています。対するは、「チームSライズ」と、あの大手自動車メーカー「チームN産」。
NHK的事情で社名が隠されていますが、「Nットー」=「ニットー」。株式会社ニットーは、金型製作をはじめ、各種金属加工を幅広く手がけるものづくり企業。アルケリスさんはそんなニットーの新事業としてスタートしたプロジェクトで、ニットーさんからスピンアウトした関係会社です。
(参考:アルケリス株式会社のプレスリリース)
さて、この魔改造された扇風機を間近で見学させていただきましょう。
チームNットー渾身の力作「ブーブー旋風鬼」
走行するために台車に載せられています。
こちらのマシン、最も特筆すべきなのは、羽根の回転の動力にエンジンを使用していることなのである!(もはや家「電」ですらないのだ・・・)写真に写るピンク色の物体はエンジン用の燃料ですね。
いやいや、エンジンなんか積んだら、制作費軽く5万円超えちゃうんじゃあないの??と思ってしまいますが、このくらいのサイズのエンジンであれば、模型飛行機用として1万円くらいで入手できるんだとか。知らなかった。
そういえばこの辺りに本来ついているはずのモーターがごっそり無くなっていますもんねぇ。よくここまで大胆な改造をしたなあ、と思います。(すごい)
エンジンを搭載するとなると、エンジンを始動するための動力を確保しなくてはいけません。自動車ではセルモーターを回してますよね。しかしこのマシンには始動用の動力装置は用いられておらず、
羽根の中心部に外部から回転体を押し付けて、始動動力を加えるのです!
(どうりで中央部分が抜けているわけだ。)
モータを積まなかったのは軽量化のためか、時間がなかったからなのか、きちんと聞いていませんでしたが・・・
このとき一つ注意しなければならないのは、外部から動力を加えた後、エンジンの起動スイッチを押してしまうと、「操作はスイッチを1回押すのみ」というレギュレーションに抵触してしまう、ということ。
開発者の方、それをなんとか回避するために工夫に工夫を重ね、
羽根の裏にフォトリフレクタ(反射型の光センサ)を設置。
これにより、外部から駆動力が加わった際、羽根が回転していることを検知して、エンジンを始動する仕組みとなっているわけです。よく考えられている!
ちなみにこちらのフォトセンサ、本番環境だと周辺の照明条件が大きく異なり、きちんと反応させるのに調整を要したとのこと。あるあるですよねー。私もそうとわかっていても、よく悩まされる問題です。
そのほかの場所も見ていきましょう!
マシンの底にあるこちらの黒い板状の物体は・・・
ブレーキパッド!
今回のコースは25m直線の往復ですから、折り返しを如何に高速にするかも大事なポイントです。これを地面に押し付けて急停車しようという作戦です。
駆動用モータはスイッチの下に。ホビー用のサーボモータです。
元々あった電子回路基板も全て外されているんですね。
その他、エンジンの始動や扇風機の首振り(折り返し後に反対向きにする)も同様にサーボモータで制御しています。
なんだかここまで見ると、外っ側は扇風機の面構えですが、中身はほとんどオリジナルの構造になっている・・・ということがわかります。開発者の本気度が伺えます!
そしてなにより、自社で金属加工ができるというのは大きな強みでしょう!
この足回りの板金加工は全て自社生産。タイトな開発スケジュールの中でスムーズに製作を進める秘訣でもあります。
いやー、ここまで見てきて、開発者の本気度だけでなく、アルケリスさん、ニットーさんの総力を挙げた体制が非常に強く垣間見えました。開発者の皆さまに、脱帽です。
(キーワードは、「やっちまったN産!」)
また、実機をご覧になりたい方は、是非コンタクトを取ってみると良いと思いますよ!
「魔改造の夜」で活躍した「かわいい綱登り人形」と「エンジン搭載の走る扇風機」は当社受付であなたの来社をお待ちしています。お近くに来た際にはお寄りください♪#魔改造の夜 #ニットー #アルケリス pic.twitter.com/mtwROZLB4b
— 藤澤秀行 ものづくりベンチャー&中小製造業 社長 (@fuji_hide) September 2, 2021
今回は紹介しませんでしたが、扇風機の他に、綱登り人形の魔改造にも参戦しています!
(綱登り人形の方は、見学時には放送前だったもので・・・)
なおこの「魔改造の夜」、現在参加チーム大募集とのこと!僕らのガレージのような企業ではない団体でも参加できるのですかね。とはいえ、休日などの限られた時間のみで、魔改造をやり切れるか、というとなかなか難しいかなあ・・・
興味のある方は、是非エントリーしてみてくださいね★
今回を含め2回に分けてお送りしたArchelis見学のレポート、皆さまいかがだったでしょうか。アシストスーツに魔改造扇風機、なかなか多様で楽しい技術交流会でした。今後もこのように、様々な方とのつながりを作りつつ、新たな発見と創意工夫にあふれたものづくり・ことづくりにつなげていきたいと思います!
それでは今回はこれにて!
(サンドマン)
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